転職・退職理由に関するアンケート調査

2015.4.21

  • 雇用
  • 意識調査
  • 障がい者
対象障がい:
  • 身体
  • 精神
  • 発達
  • 知的

実施の背景

過去に障がい者総合研究所が行なったアンケート調査によれば、多くの障がい者が悩みや不満を抱えながら働いているということが分かりました。こうした悩みや不満がいつから発生し、何をきっかけに転職や退職に至るのか、より詳細な実態を調査するため、アンケートを実施しました。

  • 対象者

    20~60代の就業経験者

  • 実施方法

    インターネット調査

  • アンケート期間

    2015/1/28~2015/2/3
    有効回答者数:752名

転職や退職を考え始める時期を確認したところ、最も多い回答は入社後3ヶ月未満でした。その為、障がい者の多くが、入社後すぐに何らかの悩みや不安を抱えているものと思われます。この傾向は特に精神障がい者のほうが強く、3ヶ月未満の割合を比較した場合、身体障がい者では12%、精神障がい者では25%と約2倍になりました。

また、入社してから実際に転職・退職するまでの期間を見ると、1年以内に3割の方が退職されています。さらに1年以内に退職した方の割合を障がい別に見ると、身体障がい者では18%、精神障がい者では46%であり、精神障がい者の約半数が1年以内に退職している事が分かりました。

こうした転職・退職に至る理由の1位は「障がいの発生・状態変化、体調不良」、2位は「職場の人間関係」。これらは密接に絡み合っており、職場の人間関係が原因で、体調不良へと繋がっているケースも多いようです。また、5位の「障がいへの理解・配慮が無かった」という回答も、「職場の人間関係」に大きな影響を与えている事が、フリーワードからも読み取れました。

なお、転職・退職を決断する前に上司や人事担当者へ相談したかという質問では、「相談した」という方は42%、逆に「相談しなかった」という方は58%であり、約6割の方が相談しないまま退職を決断している事が分かります。一方で、転職・退職を決断する前に欲しかったフォローや対応では、2位に「相談できる人・場所・機会」が上がっており、相談したくても出来なかったという実情が浮かび上がってきました。
また、転職・退職を決断する前に欲しかったフォローや対応の1位は「障がいへの理解・配慮」であり、特に現場への徹底が重要だという事が分かります。フリーワードでも、「仕事に慣れてきたら配慮がなくなった」「上司や同僚の異動に伴い、障がいへの理解・配慮が無くなった」という回答が複数ありました。その為、入社時はもちろん、入社した後も継続的にフォローし、障がいへの理解および配慮を促していく仕組みが必要だと思われます。

前職について、最初に転職・退職を考え始めたのは入社後どれくらい経過した頃ですか?

障がい別

※有効回答者数の多い身体障がい者手帳・精神保健福祉手帳所持者のみ抽出

前職について、実際に転職・退職したのは入社後どれくらい経過した頃ですか?

障がい別

※有効回答者数の多い身体障がい者手帳・精神保健福祉手帳所持者のみ抽出

前職の転職・退職理由について教えてください

《フリー回答【障がいの発生・状態変化、体調不良】》※一部抜粋

  • IT業界で過酷な労働条件(300~400時間/月程度)だったので、鬱病が悪化した(50代・男性、精神障がい者)
  • 勤務中の怪我で障害がのこり、仕事が困難になった(40代・男性、身体障がい者)
  • 求められるスピードについていけず、焦るばかりで体調も崩してしまった(40代・女性、精神障がい者)
  • 通勤中に交通事故に遭い、復職を間接的に断られた(30代・男性、精神障がい者)
  • 体調的に、車椅子を使わずに勤務することが難しくなった(30代・男性、身体障がい者)
  • 罹患した難病の影響で、業務上のパフォーマンスが低下した(50代・男性、身体障がい者)

《フリー回答【職場の人間関係が悪かった】》

  • ある日突然、同僚や上司に無視されるようになった(40代・女性、精神障がい者)
  • 業務に支障がある嫌がらせなどがあり、労働環境が良くなかった(40代・男性、身体障がい者)
  • 毎日のような放置状態(40代・男性、身体障がい者)
  • 上司や同僚からのモラルハラスメント的言動の数々があり、ストレスをためてしまった(40代・男性、精神障がい者)
  • 職場で人間関係が築けないで孤立した(30代・男性、精神障がい者)

《フリー回答【給与・待遇への不満】》

  • 給与が生活できる水準に達していなかった(40代・男性、身体障がい者)
  • 年収等が事前に聞いていた話と全然違っていた(40代・男性、身体障がい者)
  • 契約期間1年ごとの嘱託社員で、給与も低く、正社員登用制度が整備される見込みも無い事が明らかになったため(30代・男性、身体障がい者)
  • 結婚を考えていた時期でもあり、将来的な事を考えた時に給与と労働時間、仕事内容が割りに合わなかった(40代・男性、身体障がい者)
  • 昇給がない(40代・男性、身体障がい者)

《フリー回答【リストラ・事業縮小】》

  • 会社倒産(40代・男性、身体障がい者)
  • 会社合理化による人員整理(50代・男性、身体障がい者)
  • 勤務地の閉鎖(40代・男性、身体障がい者)
  • 経営陣交代により契約が更新されなかった(30代・男性、身体障がい者)
  • 業績悪化による契約打ち切り(50代・男性、身体障がい者)

《フリー回答【障がいへの理解・配慮が無かった】》

  • 新しい上司の「障がい者はどうせ大して働けない」という考えが同僚にも伝わり、居場所がなくなったと感じた(40代・男性、身体障がい者)
  • 上司が変わって方針が変わり、障がいにより出来ないことも無理に任され、難しいと伝えても認められなかった(50代・女性、身体障がい者)
  • 職場で自分なりに努力して障がいを開示した結果、同僚によっては差別と無視をされ、仕事が進まない事があった(20代・男性、精神障がい者)
  • 障がいの内容について、先輩や同僚から嘲笑された(40代・男性、精神障がい者)
  • 代替わりした経営者が精神障がい者に対して理解が無く、仕事をさせてもらえなくなった(40代・男性、精神障がい者)
  • 足が悪いので座って出来る仕事というのが条件だったが、立つ事になった(50代・男性、身体障がい者)
  • 配属先が障がい者雇用に前向きではなかったため、1年で契約満了させられた(40代・女性、身体障がい者)
  • 入社時の部署のメンバーが全て入れ替わってしまい、理解者がいなくなってしまった(40代・男性、身体障がい者)
  • どの障がいも同じだと考えられ、暇な時間は作業所のような雑用をさせられていた(30代・女性、身体障がい者)
  • 仕事に慣れてきたら配慮がなくなった(20代・男性、精神障がい者)
  • 情報保障がなかった(60代・男性、身体障がい者)
  • 障がいの事で腫れ物に触る様な扱いをされた(40代・男性、身体障がい者)
  • 内部障がい者のため、外見では分かりづらく辛くても信じてもらえなかった(50代・女性、身体障がい者)
  • 「てんかんという病気はこういうものだ」「物覚えが悪いものだ」等と、個人的意見で決めつけられた(40代・女性、精神障がい者)
 

前職では、転職・退職を決断する前に上司または人事担当者へ相談しましたか?

転職・退職を決断する前にどのようなフォローや対応があれば、前職に残っていたと思いますか?

《フリー回答》※一部抜粋

  • ちょっとした心づかい(40代・男性、身体障がい者)
  • 親身になって相談に乗ってくれたり、私自身の必要性をもっと会社に訴えて欲しかった(60代・男性、身体障がい者)
  • 自分の存在価値を認めて欲しかった(50代・女性、身体障がい者)
  • 症状の事を理解し、一度でも「頑張ってるね」と認めてもらえれば働いていたと思う(30代・男性、精神障がい者)
  • 毎年の面談など、自分の仕事に関して上司とのコミニケーションが取れていれば(40代・女性、精神障がい者)
  • 相談できる機会を設けて頂きたかった(40代・男性、精神障がい者)
  • 1ヶ月に1回面談を設ける等、現在の状況を把握してもらえるようにする(20代・女性、身体障がい者)
  • 人事面談を定期的にやってくれていたら、違っていたと思う(40代・女性、身体障がい者)
  • 仕事を増やしてくれていたら残っていた可能性は十分にある(40代・女性、身体障がい者)
  • 適切な部署への配置転換があれば良かった(40代・男性、精神障がい者)
  • 部門異動や職場改善、上司や同じ職場の人とゆっくり話す機会があれば(20代・女性、精神障がい者)
  • 障がいや傷病に対する社員の理解と、それに合わせた勤務体制の整備・相談体制があれば残っていた(40代・男性、精神障がい者)
  • 障がいについて理解し、他の社員に説明すること。また、入社したらそれで終わりではなくて、その後の状況を把握し、障がいに合ったフォローがあれば続けられたと思う(30代・女性、身体障がい者)
  • 自身のキャリアデザインに関してのアドバイスや自己研鑽のバックアップ制度などがあれば(40代・男性、身体障がい者)
  • 「達成してほしい目標とその程度/覚えて欲しい能力や仕事内容」を明確化し、給与査定の基準を伝えて欲しかった(20代・女性、精神障がい者)
  • 正社員になれるチャンスを与えようという意思が少しでも感じられることが出来たら(50代・女性、身体障がい者)
  • 仕事を教えてほしかった。具体的に「○○について教えてください」「それを私にやらせてください」と一日に何回も問いかけたが、何も教えてくれず、一日棒立ちで過ごしていた(40代・女性、精神障がい者)
  • 障がい者だからと差別せず、一般職ではなく総合職として仕事を与えて頂けたら(30代・男性、精神障がい者)
  • 少なくても、毎日責任を持って出来る仕事が欲しい(50代・女性、身体障がい者)
  • 気持ちが不安定な時期に働き方や休職等のアドバイスをされれば残っていた(40代・男性、身体障がい者)
  • 退職を申請したとき休職を勧めてくれていれば回復まで残ったかもしれない(40代・男性、精神障がい者)
  • 復職しやすい環境を整えてほしかった(40代・女性、身体障がい者)
  • 無視した人達が認めて謝罪してくれれば(40代・女性、精神障がい者)
 
アンケート回答者

アンケート期間:2015年1月28日~2月3日
有効回答者数: 752名

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