第2回 法定雇用率の引き上げの可能性に関する調査
2016.2.16
- 雇用
- 意識調査
- 企業
- 身体
- 精神
- 発達
- 知的
厚生労働省より直近に発表された2016年の「障害者雇用状況の集計結果」によれば、民間企業における障がい者の実雇用率は1.92%となり、過去最高を更新しました。このように企業の障がい者雇用への取り組みが活発化する中、2018年には改正障害者雇用促進法が施行され、法定雇用率はさらに引き上げられる見込みです。そこで、各企業がどのように法定雇用率の引き上げの可能性を捉え、障がい者雇用に取り組んでいるのかを調査するため、企業へのアンケートを実施しました。
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対象者
障がい者採用担当者
※有効回答数:100社 -
実施方法
インターネット調査
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アンケート期間
2016/11/4~11/21
<サマリー>
[1] 各企業の雇用率の目標は、現行の法定雇用率と同じ「2.0%」、現行の法定雇用率よりも高い「2.3%」、 「特に定めていない」の大きく3つに分かれ、企業規模が大きいほど高い目標を設定している傾向が見られる。
[2] 企業規模が大きいほど、法定雇用率の引き上げに向けて既に何らかの取り組みを始めている傾向が見られる。 一方で、効果が高いと感じている取り組みでは、企業規模に関わらず、 「採用手法の見直し」「採用対象層の見直し」「社外の障がい者支援機関との連携」を挙げる声が多い。
[3] 精神障がい者の採用に取り組んでいる企業ほど、「選考時の障がいや能力・適性の把握」「入社後の職場定着」 に工夫をしている傾向が見られる。
※調査結果の詳細は、右上の「調査Reportのダウンロード」より資料をダウンロードし、ご覧ください
2018年の法定雇用率の引き上げを見据え、自社の雇用率の目標をどのように定めていますか?
企業規模による比較
法定雇用率の引き上げに向けて、「既に取り組み始めている事」はありますか?
■ない
企業規模による比較
「既に取り組み始めている事」の中で、効果が高いと感じた取り組みを教えてください
企業規模による比較
現行の法定雇用率2.0%を達成するうえで、特に工夫してきた点があれば教えてください
直近1年以内における精神障がい者の採用の有無による比較
対象者: 障がい者採用担当者(有効回答数100社)
アンケート期間: 2016/11/4~11/21
実施方法: インターネット調査
■サービス
■金融
■機械/電気/精密機械
■流通/小売/外食
■商社
■建設/不動産/住宅
■医薬品/医療機器
■化粧品/化学製品
■自動車/その他輸送機器
■運輸/物流/倉庫
■その他
■1,000人未満
■1,000人以上
多様化する障害者雇用と合理的配慮 ~学識者からのコメント~
2015年4月の障害者雇用納付金制度の従業員規模100人以上企業への拡大、2016年4月の雇用分野における障害者の差別禁止と合理的配慮の提供義務化、そして2018年4月からは算定基礎に精神障害者が加わり法定雇用率が上昇することなど、近年、障害者雇用の法制度はめまぐるしく変化しています。本調査レポートはこのような障害者雇用情勢に対して、企業がどのような意識を持ち取り組みを進めているのか、その一端を明らかにするものです。
調査結果からは、2018年4月の法定雇用率改正を前にして、企業が障害者を新たに雇い入れようとする動きが活発化していることが分かります。1年前の調査結果(※)と比べると採用対象者の多様化が進んでおり、それは「効果が高いと感じている取り組み」として多数上がった「採用対象層の見直し」とも合致します。このように多様な人材を活用するため、企業は専門機関である「社外の障害者支援機関との連携」を図るとともに、「選考時の障害や能力・適性の把握」「採用した障害者の職場配置や勤務条件の調整」「採用した障害者への職務遂行上のフォロー」「職場との人間関係や健康管理面でのフォロー」など、障害者の個別性を踏まえた合理的配慮の提供を進めるようになってきたことは想像に難くありません。
産業界ではいま、労働力不足の有効対策のひとつとして、多様な人材の確保と活用が求められています。一人ひとりが持つさまざまな違いを受け入れ、それぞれを人材として活かすことにより、企業の競争力を高めようというダイバーシティ(多様性)の考え方です。障害者雇用も単に法定雇用率を達成するために取り組むのではなく、企業経営における位置付けを整え、多様な人材として活用することが重要です。そうすることで、個々の力が発揮され、企業経営に資することができるのです。そのための方法のひとつが、いま企業が取り組みを進めている合理的配慮の提供と言えるでしょう。
働く障害者と雇用する事業主が真摯に対話し相互理解を図るとともに、必要に応じて社外の専門機関の助けを借り、働く上での支障を合理的配慮の提供により解消することで、障害者は企業にとってかけがえのない戦力となります。そのような多様な人材が参加し活躍する社会は、ノーマライゼーションの理念に基づいた真の共生社会と言えるのではないでしょうか。
※株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所
調査Report No.4「法定雇用率の引き上げの可能性に関する調査」2016年1月発行
(https://www.gp-sri.jp/report/detail017.html)
直井 敏雄 氏
ノーマライゼーション促進研究会 会長
大手小売企業グループで採用・教育担当部長として障害者雇用に取り組み、退職後は、東京障害者職業センター支援員、オーダーメイド型障害者雇用サポート事業支援員、職業能力開発センター障害者就労支援推進員、特定非営利活動法人キャリアデザイン研究所副理事長などを歴任。現職はハローワーク就職支援コーディネーターとして活躍中。
企業の人事部勤務経験を基盤に、企業経営と人材活用の観点から企業の障害者雇用支援に取り組み、その実践ノウハウを広めるため、平成24年にノーマライゼーション促進研究会を設立。活動を通じて支援実践を深めるとともに、企業支援を担う人材育成に取り組んでいる。
[主な著書]
・障害者職業総合センター刊『障害者雇用に係る 事業主支援の標準的な実施方法に関する研究』 専門家による寄稿
・日本産業カウンセラー協会刊 国家資格キャリア コンサルタント養成講習テキスト『キャリアコン サルタント その理論と実務』分担執筆 など