第3回 障がい者の法定雇用率の引き上げに関する調査
2017.8.10
- 雇用
- 意識調査
- 企業
- 身体
- 精神
- 発達
- 知的
実施の背景
2017年5月30日に厚生労働省が実施した労働政策審議会において、民間企業における障がい者の法定雇用率を2018年4月に2.2%、2020年度末までに2.3%に引き上げることが承認されました。そこで、本調査では法定雇用率の引き上げに伴う、企業の障がい者雇用への対応と課題を明らかにするために、従業員数別に従業員数1000人以上と1000人未満で分け、従業員数と障がい者雇用の関係を解明しました。
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対象者
株式会社ゼネラルパートナーズ
取引企業の障がい者採用担当者 -
実施方法
インターネット調査
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アンケート期間
2017/6/5~2017/6/9
有効回答者数:72社
調査結果
<サマリー>
[1] 1000人以上の企業では法定雇用率の引き上げを見据え、実雇用率、目標ともに2.0%を超えている企業が多数の結果となりました。一方、1000人未満の企業では実雇用率が2.0%未満の企業が半数を超え、目標に関しても現行の法定雇用率である、2.0%を目標とする企業の割合が4割を占める結果となりました。
[2] 1000人以上の企業では9割を超える企業が2.2%の雇用率を達成可能と回答していることから、2.2%への引き上げを想定して、本調査の実施段階で達成の見通しを立てていたことがわかりました。一方、1000人未満の企業は7割が予想通りと回答する一方で達成できると考える企業は5割に留まり、引き上げに関しては想定していたものの、達成に向けての準備をこれから検討しようとしている段階であることが示唆されました。
[3] 引き上げの発表を受けて、今後の自社の雇用率目標を見直す予定があるかどうか聞いた結果、1000人以上では45%が見直す予定はないと回答したのに対し、1000人未満の企業では、約半数の企業が今後見直す予定と回答し、今後、障がい者雇用が活発化すると考えられます。また、新たな取り組みとして検討していることは1000人未満の企業では障がいに関する情報収集、1000人以上の企業では障がい者雇用に関する社員への啓蒙、雇用管理体制の見直しが多い結果となりました。
[4] 障害者雇用率制度についての印象を聞いた結果、良い制度だと回答した割合は1000人以上の企業が、1000人未満に比べて、10%程度高い結果となりました。良い制度だと考えない理由としては、雇用率の数値目標に追われ本来の障がい者雇用の目的を見失なっているケースや1000人未満の企業では、経営的に厳しいという意見が見られました。
※調査の概要は右上のプレスリリースをダウンロードし、ご覧ください。
詳細
<サマリー[1]に関連するグラフ>
2017年6月1日時点の御社の実雇用率を教えてください。
現時点での御社の雇用率の目標を教えてください。
実雇用率を従業員数別で比較すると、1000人未満の企業では2.0%未満の占める割合が半数を超えるのに対し、1000人以上の企業では2.2%以上の実雇用率を達成している企業がほぼ半数に達しています。次に、現時点での法定雇用率の目標を比較した結果、1000人以上の企業では65%の企業が2.3%を目標に掲げている一方で1000人未満の企業では2.3%以上と回答した企業は28%に留まり、現行の法定雇用率である2.0%と回答した企業は41%に達しました。
<サマリー[2]に関連するグラフ>
2018年度4月時点で法定雇用率が2.2%になることは予想通りでしたか。
2018年4月1日時点で2.2%の雇用率は達成できると思いますか。
次に、2018年度4月時点で法定雇用率が2.2%となることは予想通りであったか従業員数別にまとめました。1000人未満の企業では7割を超える企業が予想通りだったと回答したのに対し、1000人以上の企業では半数を超える企業が予想より低かったと回答しました。また、2.2%の雇用率を達成可能か聞いたところ、1000人以上の企業では9割を超える企業が思うと回答しましたが、1000人未満の企業では52%に留まりました。
<サマリー[3]に関連するグラフ>
今回の法定雇用率引き上げの発表を受けて、自社の雇用率の目標を見直す予定はありますか。
今回の法定雇用率引き上げの発表を受けて、「これから新たに取り組みを検討していること」を教えて下さい。
次に、引き上げの発表を受けての今後の取組方針に対して従業員数別で比較しました。まず、今後の自社の雇用率目標を見直す予定があるか聞いた結果、1000人以上の企業では45%が見直す予定はないと回答したのに対し、1000人未満の企業では、約6割の企業が今後見直す予定と回答しました。また、これから新たに取り組みを検討している内容に関しては、1000人未満の企業では障がいに関する情報収集の割合が1000人以上の企業に比べて2倍高い結果となりました。一方、1000人以上の企業では、障がい者雇用に関する社員への啓蒙が1000人未満に比べて2.9倍、雇用管理体制の見直しは5.6倍と高い結果となりました。
<サマリー[4]に関連するグラフ>
障害者雇用率制度(法定雇用率以上の割合で障がい者を雇用する義務を課す制度)について
どのような印象をお持ちですか。
<フリーワードより抜粋>※( )内は従業員数
【とても良い制度だと思う】
■障がい者ご自身の成長と共に職場の従業員が介助や配慮をしながら助けあうことの助成となるため(1000人以上)
■障がいを持ちながらも活躍できる方はいるが、なかなかこういう制度がないと雇用につながりにくいというのが現状。(1000人未満)
【まあまあ良い制度だと思う】
■企業に対し、一定数の障がい者の雇用を義務付けることは必要。但し、比較的軽度の障がい者を取り合いのような状況もあり、何らかの改善が必要だと思う。(1000人未満)
■いずれこのような法律がなくなり、障がいの有無にかかわらず適した職場で働ける社会になることが理想だが、現段階では意識付けのために必要だと思う。義務だからという理由で採用したとしても、ともに働く中で職場環境などが改善され、次の雇用に結びつくケースは少なくないと考える。(1000人以上)
■日本では身体⇒知的、そして精神・発達といまだ変遷の過渡期であり、法的縛りのある制度は必要と考える。ただし、先進的な企業であるほど単に雇用率達成を掲げるだけでなく、企業の中で障害者が戦力になる環境づくりにシフトしてきていると思われる。(1000人以上)
【あまり良い制度だと思わない】
■受け皿ができていないなかで無理に雇用することになり、障害者及び会社、社員にとっても良くない。(1000人未満)
■数字を満たす事に一生懸命になってしまうような気がする。本当はゆっくり見極めて良い方を数字関係なくとりたい。そうすることによって多くの採用ができる場合もある。(1000人未満)
■目標を定めて取り組むことは必要ではあるが、数合わせの採用が進み、障害者の過度な売り手市場が加速して、健全な選考が行われない懸念があるため。(1000人以上)
【まったく良い制度だと思わない】
■経営的に厳しい企業にとって、重荷である。(1000人未満)
最後に、障害者雇用率制度についての印象を聞きました。とても良い制度だと思う、まあまあ良い制度だと思うと回答した割合は1000人以上の企業が1000人未満の企業に比べ、10%程度高い結果となりました。また、まったく良い制度だと思わないと回答した企業は1000人以上の企業では無かったのに対し1000人未満の企業では9.4%存在する結果となりました。良い制度だと思わない意見としては雇用率の数値目標の達成に追われ、本来の障がい者雇用の目的を見失なうのではないかという懸念が多く聞かれました。また、1000人未満の企業では、経営的に厳しいという声も見られました。
アンケート期間 : 2017年6月5日~6月9日
有効回答数: : 72社
<従業員数>
第3回 障がい者の法定雇用率の引き上げに関する調査
- 発行・監修
- 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所
〒100-0011 東京都千代田区内幸町2-1-1 飯野ビルディング9階
TEL:0570-55-0765(代表) Mail: sri@generalpartners.co.jp URL: https://www.gp-sri.jp/ - 発行日
- 2017年7月
- お問い合わせ先
- 研究員 小牧秀太郎
※本調査結果の引用の際は、「株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所調べ」とクレジットを明記ください
≪株式会社ゼネラルパートナーズについて≫
障がい者の良き認知を広め、差別偏見のない社会を実現することを目指し、民間企業初の障がい者専門の人材紹介会社としてスタート。その後、業界初の転職サイトatGPの開設をはじめ、障がい別の専門的なプログラムが受けられる教育・研修事業、就労困難な障がい者による農業生産事業など、数々の事業・サービスを創出してきました。これまで生み出した障がい者の雇用数はのべ5,000人以上です。
- 会社名
- 株式会社ゼネラルパートナーズ
- 代表者
- 代表取締役社長 進藤 均
- URL
- https://www.generalpartners.co.jp/
- 本社所在地
- 〒100-0011
東京都千代田区内幸町2-1-1 飯野ビルディング9階 - 設立日
- 2003年4月
- 事業内容
- 障がい者の総合就職・転職サービス(求人情報サービス、人材紹介サービス、就労移行支援事業、就労継続支援A型事業)
<障害者総合研究所所長中山伸大からのコメント>
従業員数1000人以上の企業では、83%が2018年4月1日時点で2.2%の法定雇用率を「達成できると思う」と回答していることからも、障害者雇用について、ある程度計画どおりに進められていることが推測されます。
対照的に1000人未満の企業では、2018年時点の2.2%を「達成できると思わない」とする企業が44%に上ることから、対応が追いついていない印象を受けます。自社の雇用率の目標について、見直しを検討している企業が多いことからも、法定雇用率引き上げの発表を受けて、今後の取り組みを考える必要に迫られていることが明らかになりました。また、「これから新たに取り組みを検討していること」についても、従業員数による違いが見られます。1000人以上の企業は「社内の相談窓口や専任の担当者設置など、雇用管理体制の見直し」や「障害者雇用に関する社員への啓蒙」という取り組みが1000人未満の企業と比較して多く、障害者を採用するだけではなく、障害者の職場定着に向けた取り組みを重視していることが分かります。前回の法定雇用率の引き上げの際には、準備が不十分な中、採用数ばかりに注力した結果、採用後に問題が表出し、雇用継続が難しくなるケースが散見されました。今回の法改正に伴い、これからは精神障害者の雇用促進が法定雇用率達成の鍵となることからも、今まで以上に採用だけではなく、その先の職場定着や能力発揮に向けた取り組みについても検討していく必要があるでしょう。
このように、1000人以上の企業は1000人未満の企業と比較し、先行した取り組みをしていると言えますが、1000人未満の企業では障害者雇用の専任担当を設置することが難しいなど、1000人以上の企業と同じ取り組みをすることが難しい場合があると思います。近年、障害者の支援機関を活用しながら障害者雇用を進める成功事例が増えてきました。支援機関の保有するアセスメント情報を参考にして採用することでミスマッチのリスクを減らすこともでき、採用後も職場定着に向けた中立的な支援を受けられることから、問題の早期解決が見込めます。社内で十分な人的リソースを活用できない1000人未満の企業こそ、外部機関の活用が有効だと考えます。