発達障がい者の障がいカミングアウトに関する調査(親・恋人・親友・知人編)
2018.03.19
- 生活
- 意識調査
- 障がい者
- 発達
実施の背景
2016年5月に発達障がい者への理解や社会促進を目的とした発達障害者支援法が改正されるなど、発達障がいに対する社会認知は徐々に進んでいるといえます。本調査では、発達障がいに対する理解の程度を明らかにすることを目的として、発達障がい者が日常生活で接する人々に対して、自身の障がいを伝えているのか、伝えた場合は相手との関係性や相手の関わりがどう変化したかを調査しました。
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対象者
障がい者総合研究所
アンケートモニター -
実施方法
インターネット調査
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アンケート期間
2017/9/14~2017/9/20
有効回答者数:92名
調査結果
<サマリー>
[1] 関係性のより深い相手に対して自身の発達障がいをカミングアウトしている
親・恋人は90%以上、親友は68%、知人・友人は45%
[2] 伝えていない理由の一位は「伝えても理解してもらえないから」
[3] カミングアウト後の相手との関係性は「良くなった」「伝える前と変わらない」という回答が9割
[4] カミングアウト後、相手は「障がいを理解してくれていないと感じる」という回答が3割~4割
※調査の概要は右上のプレスリリースをダウンロードし、ご覧ください。
詳細
- 《 親へのカミングアウト 》
親に発達障がいであることを伝えていますか?
《伝えている方》伝えた結果、親との関係性はどうなりましたか?
《伝えていない方》伝えていない理由は何ですか?
発達障がいであることを伝えた後、相手の関わりはどちらに近いですか?
《障がいを理解してくれていると感じる》
■仕事ができないことに対して、厳しいことをあまり言わなくなったからです(40代/女性)
■就職活動のことを言われなくなった(20代/女性)
■自分のペースを尊重してくれるようになった(20代/男性)
■暑さに弱い感覚過敏に理解を示し、クーラーを積極的に使わせてくれるようになった。できないことは強要しないようにサポートしてくれる(30代/男性)
■障がいについて勉強し、いろいろ配慮などしてくれるようになった(20代/男性)
■テレビや新聞などで発達障がいについて取り上げられていると、積極的に見てくれている(40代/男性)
■発達障がいなどに関する書籍やTVなどを見たり、読んだりしてくれるようになった(50代/女性)
■今までは単なる不注意や性格の問題と捉えられていたが、診断後はそれが障がいであることを理解し、接し方もそれに応じたものになってきていると感じる(30代/男性)
■伝える前と後で、良い意味で態度を変えることがなかったから(40代/男性)
《障がいを理解してくれていないと感じる》
■「自分の障がいは他の人(知的、自閉症当事者)と比べると軽い」と言われるなど、軽視されている(30代/男性)
■「自分たちは障がい者だと思ってない。あなたはただ変わっているだけだ。」と言われた(20代/男性)
■知らなかったときと同様に、あんたのわがままだと言われる(20代/女性)
■宇宙人を生んだ覚えはないと言われている(30代/女性)
■障がいを伝えた際、「仕事を辞めたくて適当な病気をでっち上げている」「そんなに働きたくなかったのか」などと言われた。こちらも感情的になり、親が泣くまで罵ってしまい、それ以後、険悪な関係となった(30代/男性)
■障がいがあることを恥だと感じているため(40代/男性)
■私に対して、親の考える「普通」という価値観の押し付けがあり、私の「ありのまま」や「個性」を受け入れてくれていない感じがします(30代/女性)
■健常者には簡単なことでもアスペルガーには難しいことを理解してもらえない(30代/男性)
■発達障がいに関するテレビ番組や本を借りてきて読んでもらうようお願いしましたが、全く見ようとも読もうともせず、サポートが必要なときも全くサポートしてくれません。今後も理解してくれそうにないので、とっくに希望は捨ててます(40代/女性)
■私が発達障がいだと言っても、母親は「あんたはちがう。統合失調症や」といつも二次障がいのことを言われます(30代/男性)
- 《 恋人・親友へのカミングアウト 》
恋人に発達障がいであることを伝えていますか?
親友に発達障がいであることを伝えていますか?
《伝えている方》伝えた結果、恋人・親友 との関係性はどうなりましたか?
《伝えていない方》伝えていない理由は何ですか?
発達障がいであることを伝えた後、相手の関わりはどちらに近いですか?
《障がいを理解してくれていると感じる》
■興味がある分野を異常に掘り下げる特性があるが、物知りなところが魅力と言われる(40代/男性)
■「キミの変なところが、やっと理由があることが分かって逆に安心した」と言われた(30代/男性)
■苦手なことをよく協力してくれるから(20代/女性)
■障がいの特性を把握しようとし、その状態を改善する手助けをしてくれている(20代/女性)
■コミュニケーションの面で、配慮してもらえるようになった(30代/男性)
■以前と全く変化なく接してくれている(30代/男性)
■ありのままを以前と変わらず受け入れてくれている(40代/男性)
■障がいの特性について、細かいことを気にしない(20代/女性)
■特性について寛容だから(20代/女性)
■発達障がいに関する書籍などで情報を集めて、実際に配慮してくれている(20代/男性)
■恋人が広汎性発達障がいで当事者同士ということもあり、障がいの理解はしてもらえていると感じる。親友は障がいに対しての理解は感じないが、今までと何も変わらない付き合いを続けてくれているのが、ありがたく感じる(30代/男性)
■恋人とは大人の発達障がいの当事者会で知り合ったので、伝える前後で変化はない。もともと理解度は高かったが、付き合うようになってからさらに上がった(30代/男性)
《障がいを理解してくれていないと感じる》
■できない部分について「努力が足りない」だの、どれだけ説明しても、健常者と同じような行動を求められるから(40代/男性)
■障がいは自分で克服するものだと言い切られた。私は、周囲の協力も必要だと感じているので、温度差があるように思える(30代/男性)
■発達障がいの特性を何度伝えても、配慮が無い言動や行動が多いように感じる(50代/女性)
■それまで個性的な人物として見られていたものが、障がい者と分かった途端、接し方が素っ気なくなったり、連絡しても返信が来なくなるなど、親しいと思っていた人々が静かに離れていくのが目に見えて分かりました。アスペルガーや発達障がいという単語が一人歩きし、ネガティブなイメージで語られることが多い中、健常者との間に相容れない壁があることを実感しました(30代/男性)
- 《 友人・知人へのカミングアウト 》
親友以外の友人・知人へ発達障がいであることを伝えていますか?
《伝えている方》伝えた結果、 友人・知人との関係性はどうなりましたか?
《伝えていない方》伝えていない理由は何ですか?
発達障がいであることを伝えた後、相手の関わりはどちらに近いですか?
《障がいを理解してくれていると感じる》
■ある程度ズレた回答をした時に察してくれていると思う(20代/男性)
■それまでの関係を変えずに普通に接してくれている(20代/男性)
■概ね伝える前と変わらず付き合えているが、中には障がいを理解していない人や、知的障がいと混同して私の障がいに疑問を持っている人もいる(30代/男性)
《障がいを理解してくれていないと感じる》
■障がいをめんどくさいものと捉えられ、疎遠になってしまった(20代/女性)
■ほとんどの人に「へぇ大変だね」と言われ、「どこが障がい?」と聞かれる。世間の情報をもとに漠然とした大変さは感じてくれているが、見た目では分からないので、理解はあまり無い(30代/男性)
回答者属性
回答期間 : 2017年9月14日~9月20日
調査方法 : インターネット調査
有効回答数: 92名
<年代>
<男女比>
発達障がい者の障がいカミングアウトに関する調査(親・恋人・親友・知人編)
- 発行・監修
- 株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所
〒100-0011 東京都千代田区内幸町2-1-1 飯野ビルディング9階
TEL:0570-55-0765(代表) Mail: sri@generalpartners.co.jp URL: https://www.gp-sri.jp/ - 発行日
- 2018年3月
- お問い合わせ先
- 研究員 小牧秀太郎
※本調査結果の引用の際は、「株式会社ゼネラルパートナーズ 障がい者総合研究所調べ」とクレジットを明記ください
≪株式会社ゼネラルパートナーズについて≫
障がい者の良き認知を広め、差別偏見のない社会を実現することを目指し、民間企業初の障がい者専門の人材紹介会社としてスタート。その後、業界初の転職サイトatGPの開設をはじめ、障がい別の専門的なプログラムが受けられる教育・研修事業、就労困難な障がい者による農業生産事業など、数々の事業・サービスを創出してきました。これまで生み出した障がい者の雇用数はのべ5,000人以上です。
- 会社名
- 株式会社ゼネラルパートナーズ
- 代表者
- 代表取締役社長 進藤 均
- URL
- https://www.generalpartners.co.jp/
- 本社所在地
- 〒100-0011
東京都千代田区内幸町2-1-1 飯野ビルディング9階 - 設立日
- 2003年4月
- 事業内容
- 障がい者の総合就職・転職サービス(求人情報サービス、人材紹介サービス、就労移行支援事業、就労継続支援A型事業)
<障がい者総合研究所所長中山伸大からのコメント>
2005年に施行された発達障害者支援法が2016年に改正されるなど、ここ10年ほどの間に、発達障がいに対する社会的な認知は大きく進んでいます。そこで、障がい者総合研究所では、発達障がいの当事者に対して、自身の障がいを周囲にカミングアウトしているかについて調査を実施しました。
その結果、親や恋人に対して、自身に発達障がいがあることを伝えている人は90%を超え、ほとんどが伝えていることが分かりました。同様に、親友に対しては68%、知人に対しては45%という結果になり、関係性のより深い相手に障がいをカミングアウトしていることがうかがえます。
カミングアウト後の相手との関係性については、いずれも「良くなった」「伝える前と変わらない」と回答した人が9割前後となっており、障がいがあることを伝えたことによって関係性が悪化した人は少ないようです。一方で、障がいへの理解に対しては、いずれも3~4割が「障がいを理解してくれていないと感じる」と回答しており、伝えることが必ずしも理解につながっていないことが分かりました。理解してくれていないと感じる理由として、「できない要因を努力不足とされる」「ありのままを受け入れてもらえない」「『どこが障がい?』と聞かれる」といった声が挙がっており、発達障がいの認知は広がってきましたが、本質的な理解という点では課題があるものと思われます。