障がい者雇用への取り組みに関する事例研究
2016.6.22
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考察
マイナビ社、サイトサポート・インスティテュート社の2社の事例から、障がい者雇用を成功させるためのポイントについて考察しました。
共通する障がい者雇用への課題の大きさ
両社に共通するのは、障がい者雇用を進めるハードルが高かった点です。サイトサポート・インスティテュート社はメインの事業内容が新薬の治験支援という専門的な領域のため、採用できる人材が限られてしまうという難しさを抱えていました。マイナビ社は事業の急拡大により、配属部署において、障がい者の受け入れが難しい状況が発生し、障がい者採用が進みづらくなりました。マイナビ社のように、人事部で積極的に採用活動を進めようとしても、配属部署で障がい者を受け入れる体制が整っていないため、選考が進まないというケースはよく遭遇します。
このような課題に対して、抜本的な戦略変更をされた点についても両社に共通します。課題解決のためには大きな舵取りが必要不可欠だったのかもしれませんが、高い視点で障がい者雇用に取り組んだことが成功を生んだといえるのではないかと考えます。
2社の事例から、障がい者雇用を成功させるための3つの要素が浮かび上がりました。
- (1)障がい者雇用に対する社内の意識改革
- (2)多面的な評価をもとにした採用活動
- (3)障がい者の成長促進・キャリアパス
障がい者雇用を成功させる3つの要素
(1)障がい者雇用に対する社内の意識改革
まず、初めに「障がい者雇用に対する社内の意識改革」という点を挙げます。マイナビ社、サイトサポート・インスティテュート社ともに、人事採用部門以外の部署を良い形で巻き込みながら障がい者雇用を進めています。
マイナビ社では、障がい者が働くオフィスセンターで様々な部署の業務を請け負っていますが、オフィスセンターで働く障がい者の高いパフォーマンスが口コミで社内に伝播され、対応できないほどの業務の依頼がありました。これまで応募書類や面接では受け入れが難しいと感じていた方も、障がいのある方の実際の仕事の様子や成果を知ることで考えが少し変わったのではないでしょうか。このように、障がい者と一緒に働く側の社員が持つ「障がい者のイメージ」を変えていくことが、障がい者雇用を進めていく上で大切なポイントだと考えます。マイナビ社のように障がい者が働くための部署を設けると、障がいのある社員との接点がなくなってしまうことが想定されますが、同社ではそのようなことはなく、業務の打ち合わせを障がいのある社員と依頼元の社員で行うなど、ともに働く機会を設けています。このように直接的な接点を作ることや、同社の取り組みにもありましたが、障がいのある社員の成果を数値化するなど、間接的にも障がい者の働きぶりを社内に伝えていくことが大事だと考えます。
同じように、サイトサポート・インスティテュート社での企業実習の受入も社員の障がい者に対する意識を変える効果があるといえます。企業実習では短期間とはいえ、障がいのある方と一緒に仕事をしますので、履歴書や職務経歴書、面接といった通常の選考だけでは分からないような職業スキルやヒューマンスキルを感じることができ、障がいのある方と一緒に働くイメージを持つことに繋がります。実習に対しては工数の問題から懸念される企業が多いですが、実習受入により社員の障がい者への印象が変わり、採用に至ったという事例は多くあります。
両社の事例からも分かるように、障がい者に対する固定概念を変えていくことは障がい者雇用を進める上で大事なステップです。しかし、それを業務命令のような形で進めるのではなく、既存社員への配慮を意識しながら進めてきた点は、両社の障がい者雇用の取り組み方として特筆すべきだといえます。
マイナビ社では、各事業部を一つの会社と見立て、経営層にも働きかけ、全社の課題として取組んできました。サイトサポート・インスティテュート社では、実習受入に関して、現場と丁寧に話し合いをしながら理解を訴求しています。また、親会社にかけあって人事システムを見直すなど、障がい者の実習受入の障壁になることを事前に調整されています。このように、社内の意識改革を促進させるための工夫を重ねてきた点が真の成功要因といえるかもしれません。