障がい者雇用への取り組みに関する事例研究
2016.6.22
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株式会社 マイナビ
『オフィスセンター』設立後も、引き続き障がい者雇用は大きな課題の一つ
障がい者雇用は今や会社全体の経営課題になっています。あるタイミングから経営層に働きかけ、全社で取り組まなければならない課題であることを認識してもらいました。当社には約15の事業部がありますが、事業部を1つの会社と考え、500名が在籍している事業部ならその2.0%として10ポイント、800名だったら16ポイントの障がい者を受け入れてくださいということを各事業部のトップに伝え、現場にも共有してもらっています。
また、当社では派遣事業も行なっていますので、派遣スタッフとして社外で働いている1,000人以上の方々も従業員とカウントされます。ありがたいことに派遣事業の事業規模も拡大していますので、今後増えていく派遣スタッフに比例した必要ポイント増への対策も急務です。
『オフィスセンター』開設から2年の現状
当初の想定よりも順調に進んだ受け入れ業務の切り出し
『オフィスセンター』設立が承認された後の準備段階で苦労したのは、業務の切り出しです。『オフィスセンター』で担う業務は、やみくもにかき集めれば良いというものではなく、基本的には「社員の福利厚生に寄与するもの」、「会社の売上増に寄与するもの」、「会社のコストダウンに寄与するもの」という3つのいずれかに当てはまるものを行うというスタンスです。そこは徹底しつつ、業務を依頼する各部署に理解を浸透させるというのが、一番意識している点です。
立ち上げ当初、まずは総務で行なっていたメーリング業務を、担当していた社員ごと『オフィスセンター』に移しました。最初はメンバーが2名しかいなかったこともあり、仕事を拡大できるほどのキャパシティはありませんでした。ところが、メーリング業務を仕切っている社員が、今どの部署でスポット的な軽作業をやっているのか、それを手伝った場合どれくらいの時間で終了するのか、ある程度定型化されている作業が年間どの程度発生しているのかなど、そういうことによく鼻のきく人物でした。郵便物や荷物を配って歩きながら、『オフィスセンター』のキャパシティに応じて、こちらから「引き受けますよ」と声をかけるようになり、徐々に仕事を増やしていきました。
すると今度は、「あの事業部で『オフィスセンター』に手伝ってもらったらしい」という口コミによって社内での認知度がじわじわと広がり、「この作業をお願いできませんか?」と依頼が増えていきました。それに加えて、対外向けに制作した障がい者採用のWebサイトを全社共有したところ、社内で障がい者がどのように活躍しているのかということや、新しくできた『オフィスセンター』についての社内認知も一気に広がり、今では引き受けられず断ることもあるほど、依頼が来るようになっています。
働く障がい者スタッフの将来には複数の選択肢を用意
『オフィスセンター』では有期の契約が基本ですが、貢献度によっては昇給や正社員登用という道もあります。さらに、『オフィスセンター』内でのパフォーマンスが非常に高く、評価された方は、『オフィスセンター』を卒業するような形で社内の様々な部署へ異動していただくこともあります。その際は給料が上がることになります。このように今後の働き方として複数の選択肢があり、それぞれ自分のやりたいことや目指すところを定めてもらい、それに合わせて我々も必要なサポートをしていくということを考えています。
また、業務の依頼内容によっては、『オフィスセンター』の管理者ではなくメンバーと直接打ち合わせる場面もあり、接点が生まれています。その中で、メンバー側による現場への理解が進み「現場で働いてみたい」と手を挙げてくれるのが理想です。今後は、『オフィスセンター』で1~2年働き、パフォーマンスが高く本人の希望があれば、他部署に配置転換するということも考えています。現場が一番不安がっているのは、結局のところ障がい者の新規雇用なので、言ってみれば、『オフィスセンター』のお墨付き人材なら受け入れの不安も解消します。そして『オフィスセンター』では新しい人材を採用していくという方式ができれば良いなと思っています。
個人が成長目標を掲げ、長く働けるモチベーションを
実は、リーダーではない方のモチベートをどうするか、という点が課題です。リーダーは自分が評価されていると感じ期待に応えようと頑張ってくれます。なので、リーダーでないメンバーには、自分もそうなりたい、今後はリーダーを目指そうという目標を持ってもらうことが、モチベーションに繋がるのではないかと思っています。そのためには、次の半期、次の1年でどこをどう目指していくのかを管理者と明確にして、それに対してチェックを重ねながら改善していくことの繰り返しなのかなと思います。安定就業が目標の方もいる、業務を覚えるのが目標の方もいる、リーダーとしてマネジメントができるようになることを目標とする方もいる。それぞれのレベルに合った目標設定をしてもらっています。 また、今はまだできてはいないのですが、評価制度を作るというのも大きな課題です。営業職の売上目標のように、誰の目にも明確な数字での評価ができないので、個々のパフォーマンスをなんとか数値化できる仕組みを導入できないかと、取り組んでいるところです。
規模の拡大が進む一方で、一定の業務量をキープすることも大切
当初の想定以上だったのが、『オフィスセンター』の拡大スピードです。当初こそ社内から仕事が集められるのかという不安がありましたが、今は依頼を断ることもあるくらいなので、このペースは非常に良いのではと思っています。このような状況ですから、なるべく多くの仕事を受けつつ、整理もしていきたいと考えています。具体的には、イレギュラーで一時発生的な仕事よりも、業務内容がマニュアル化でき、かつ継続的に発生するものを中心に請け負っていきたいです。突発的な出来事に対応できない方もいるので、ルーティン業務の占める割合が高くなり、極端な繁忙期と閑散期がなく年間を通じて業務量が安定化すれば、雇用も安定するのではないかと思うからです。そのような意味でも、依頼された仕事をすべて受けられるような体制ではなく、受けるべきものと受けないものの選別も重要となっています。
『オフィスセンター』のメンバーと現場との接点が増えたことで「これをやってもらって助かった」、「こんなこともしてもらえるんですね」と、現場から直接感謝される機会も想像以上に増えました。自分たちの役割が社内で浸透するにつれて現場からの感謝の声も高まり、それがメンバーにとっては大きな喜びとなり、モチベーションに繋がっていることは素晴らしいと思います。